小規模

記載の標準化

                                 [目次]
はじめに
コスト及び費用対効果の問題
スタッフのITリテラシーの問題
医師の配置の問題
医療IT専任担当者の配置の問題
小規模病院で電子カルテ導入を進めるための条件

はじめに

厚生労働省の医療施設調査(以下、図参照)によると、電子カルテの普及率は、一般病院全体で46.7%、一般診療所で41.6%となっています。病床規模別では、400床以上で85.4%、200床~399床で64.9%、200床未満で37.0%となっています。病院全体の6割を占める200床未満の小規模病院が最も普及が遅れていることが分かります。なぜ、小規模病院で電子カルテの導入が進まないのでしょうか。今回は小規模病院の電子カルテの導入が進まない理由について考えてみます。

コスト及び費用対効果の問題

小規模病院に電子カルテの導入を見送っている理由をお聞きすると、真っ先に挙がるのがコストの問題です。電子カルテ導入にかかるコストが高額で手が出ないというのです。

かつて、電子カルテ導入にかかる費用は、「1床100万円」と言われていました。これで計算すると、100床の病院で1億円となります。また、保守料が総額の5%が相場ですので、別に500万円が毎年かかることになります。また、6年~7年ごとにシステム更新にまた費用が掛かりますので、トータルで考えると、とても捻出できないという意思決定になったのではないでしょうか。

また、「費用対効果がわからない」というご意見も良くお聞きします。高額な電子カルテを導入することで、どんな効果があるのかが分からなければ、当然投資する意思決定には至りません。かつては、医事会計システムがレセプト請求の効率を大幅に改善したり、オーダリングシステムが各部門への伝達プロセスを大幅に改善するといった効果と比較すると、電子カルテはそこまでのインパクトがないと考えられたのではないでしょうか

スタッフのITリテラシーの問題

小規模病院は、そもそもIT化が遅れていたため、スタッフがパソコンを触る機会はほとんどありません。つまり、ひとり1台のパソコンが当たり前の一般企業とは異なり、病院ではパソコンが特段操作できなくても普通に業務が行えるため、スタッフのITリテラシーが向上しないという問題が生まれているのです。小規模病院は大規模病院に比べ、「パソコンに苦手意識があるスタッフが多い」ことも、電子カルテ導入が遅れる原因となっているのではないでしょうか。

実際、小規模病院に電子カルテの提案に伺うと、「パソコンの苦手なスタッフが多い」ことを嘆かれる経営者をよく見かけます。まして、スタッフの大半を占める看護師が「パソコンが苦手」と言い出したら、電子カルテの導入は暗礁に乗り上げてしまいます。

電子カルテを使うためには、どうしてもパソコンの操作は避けて通れませんので、これが導入のハードルのひとつになっていたことは容易に予想されます。

医師の配置の問題

小規模病院は非常勤の医師が多いこともひとつの特徴です。近年の医師不足の影響から、医師の確保に苦労されている経営者を多く見かけます。関連病院からの医師の派遣により、なんとか運営している場合もあるでしょう。たまに来る医師にとっては、電子カルテの操作を毎回、看護師や助手に教えてもらい手伝ってもらう必要があります。

また、メーカーが違えば操作方法も違いますし、薬や検査の内容も異なります。電子カルテの操作画面、いわゆるUI(ユーザーインタフェイス)がメーカーごとに異なることも、非常勤医師の多い病院にとっては、導入の障害になっていたのだと思われます。

医療IT専任担当者の配置の問題

電子カルテの導入など、病院のIT化を進めるためには、病院内の各部門の情報をとりまとめ、システム業者との折衝窓口になる人材が必要不可欠です。これを一般的に「医療IT担当者」と呼びますが、この人材を確保するのも小規模病院は苦労します。

大規模な病院であれば、元電子カルテメーカーにいた人を雇うという選択肢もありますが、小規模病院は新たに専門の人材を雇う余裕もありませんし、人脈ルートもありません。結局、パソコンが得意そうなスタッフに兼務でIT担当者になってもらうという選択になりがちです。パソコンが得意という理由だけでは、電子カルテの導入を任せるのは荷が重いと思われます。院内に医療IT担当者を配置できないことも、電子カルテの導入が進まない原因となっています。

小規模病院で電子カルテ導入を進めるための条件

これまで挙げたような理由を改善するためには、以下の5点の施策が必要です。

(1)小規模病院でも導入可能なコストであること

(2)導入計画において費用対効果、すなわち明確な導入目的を定義すること

(3)パソコンが苦手なスタッフでも操作可能なシステムであること、あるいはパソコン操作をトレーニングするカリキュラムを用意すること

(4)非常勤の医師でもすぐに操作が覚えられるか、医師事務作業補助者のようなサポートスタッフを育成、配置すること

(5)医療IT担当者がいなくても、導入が進むような体制が構築できること(ITコンサルタントやプロジェクトマネージャの派遣など)

この5つの条件をクリアできなければ、小規模病院では電子カルテ導入はなかなか進まないのではないかと考えます。