看護記録

電子カルテと看護部門システム

                                 [目次]
はじめに
看護記録とは何か
看護記録の簡易に変更可能に

はじめに

ほとんどの病院において最も人数が多い部門は「看護部門」ではないでしょうか。そのため、多数の看護師や看護助手を束ねる、看護部長や病棟師長が電子カルテの選定において重要なキーマンとなっています。また、病棟では日ごろから医師と看護師は密な連携を取っており、看護師の医療行為は、基本医師の指示に基づき行われるものであるため、医師がカルテを通して出した処方や処置などのオーダーを確認しやすいものである必要があるのです。つまり、電子カルテと看護部門のシステムは密接な連携性が求められるのです。

一般的に、「看護部門」のシステムは、看護支援システムとも呼ばれ、病棟で看護師等が「看護記録」や「温度版(ワークシート)」、様々な「帳票」を作成するシステムです。今回は「看護部門」システムのチェックポイントについて考えてみます。

看護記録とは何か

公益社団法人日本看護協会の「看護記録に関する指針」では、看護記録を「あらゆる場で看護実践を行うすべての看護職の一連の過程を記録したものである」と定義しています。また、同指針に明記された看護記録の目的については、

  • 看護実践を証明する(看護実践の一連の過程を記録することにより、専門的な判断をもとに行われた看護実践を明示する。)
  • 看護実践の継続性と一貫性を担保する(看護職の間で、看護記録を通じて看護実践の内容を共有することにより、継続性と一貫性のある看護実践を提供する。)
  • 看護実践の評価及び質の向上を図る(看護記録に書かれた看護実践を振り返り、評価することで、次により質の高い看護実践を提供することにつながる。また、看護研究等で看護記録に書かれた看護実践の内容を蓄積、分析し、新しい知見を得ることで、より質の高い看護実践の提供につながる。)

とされています。つまり、看護部門システムに求められる要素として、看護プロセスを適時に記録でき、その記録した情報を部門間および多職種間での情報共有でき、情報を蓄積しそのデータを用いた2次利用が容易であること、の3点が必要とのこととなる。

 また、同指針では記録記載時の注意点として、①正確性の確保②責任の明確化③看護記録記載の代行④看護記録に使用する用語・略語の統一、の4点を喚起しています。これは電子カルテの3原則である「真正性」「見読性」「保存性」を踏まえて考えられた視点であろう。特に、真正性を正確性と表現し、

  • 事実を正確に記載する
  • 記載した日時と記載した個人の名前を残す
  • 記載内容の訂正をする場合、訂正した者、内容、日時が分かるように行う。さらに、訂正する前の記載は読み取れる形で残しておく
  • 追記をする場合は、いつの、どの箇所への追記であるかがわかるようにする

 と重点的に定義しています。

看護記録の効率化

同指針では、看護記録の効率化の必要性についても言及しています。「看護記録は重要であるが、看護記録の作成に時間を要すると、看護実践に必要な時間を確保することが困難となる事態も生じかねない」と注意を促しています。対策としては、「各施設で記録の様式や略語を定めることで、看護記録の効率化を図ることができる」としています。

看護記録の簡易に変更可能に

看護記録は、「経時記録」「SOAP」「フォーカスチャート」など、病院によって採用する形式が異なります。その病院の機能によって、どの形式を選ぶかはそれぞれ自由であり、体制が変わることによって見直される可能性があるため、これら様々な形式にフォーマットがいつでも簡単に変更できる方が良いと考えます。

また、看護配置により受け持ち患者数は異なりますが、その数の大小にかかわらず、看護記録が負担になっている看護師が多く存在します。直感的に理解しやすい表示と入力を実現したフォーマットが求められています。入力方法についても、よく使う用語を簡単に辞書や定型文に登録できたり、テンプレートが簡単に作成できたり、するものが良いでしょう。操作性とともに、簡易なカスタマイズ性が求められています。

ベッドサイトでのモバイル端末の利用

看護師はベッドサイトでの入力が多く、カートにノートパソコンを載せて運ぶ形式が一般的になっています。昨今では、タブレット端末の普及により、iPadやサーフェスを利用しているケースも見かけるようになりました。こういったモバイル端末を利用する際の注意点としては、モニターサイズの縮小、キーボードとマウス操作からタッチパネル操作への変更など、モバイル端末ならではの操作性へどのように合わせるかにあると思います。モバイル端末もパソコンも同じようなインターフェイスでは使い勝手が落ちてしまうと考えてよいでしょう。

温度版の確認は操作しながら

 病棟では「温度版(ワークシート)」が多職種間の情報共有のベースとなっています。そのため、この温度版に、①どの情報を表示させるのか、②どのように入力するのか、③入力端末をどうするか、は現場から多くの意見があがるところです。

温度版をチェックするには、紙のころの温度版の利便性を残しながら、デジタルの良さを十分に生かした温度版を探す必要があり、実際に操作しながらひとつひとつ確認すると良いでしょう。

「帳票」は作成のワークフローを確認する

 看護部門システムから作成したい「帳票」は、現在使用している帳票を提示し、看護記録や電子カルテのどの情報から転記して欲しいかを説明することである程度は実現可能です。帳票作成に時間がかかっては業務の遅延につながりますので、帳票が作れるというチェックだけではなく、素早く、簡単な操作で作れることにこだわって確認すると良いでしょう。