営業データを作る

電子カルテから経営データを作る

                                 [目次]
はじめに
データヘルス改革
統計機能
RPAの活用
経営分析ツール

病院で電子カルテの普及が進み、一般化されることで、これまでのように「電子カルテを導入し、院内のデジタル化を進め情報共有を図る」ことを目的としていた時代から、「電子カルテに蓄積されたデータをどのように活用するか(2次利用)」を考える時代となりました。一方で、世の中もIT、ICT、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)と時代は移り変わって行こうとしています。

ちなみに、DXとは、「デジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革し、既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの」と定義されています。

データヘルス改革

医療の世界でも、ビッグデータの活用に注目して「データヘルス改革推進本部」が厚労省に設置され、急ピッチで議論・体制整備が進められています。同本部が設置された背景には、急速に進む少子高齢化を受けて、このままでは医療提供体制が維持できないという危機意識から生まれたものです。これまでばらばらであった健康、医療、介護分野の様々なデータを統合、再構築する仕組みを作り出すことで、新たなイノベーションを生み出そうとしているのです。

同本部によると、データヘルス改革の効果として、「予防医療の促進や生活習慣病対策、新たな治療法の開発や創薬、医療経済の適正化、介護負担の軽減や介護環境整備の推進における問題解決の分析や政策立案、実施を効率的に行うために、自治体、保険者や医療機関などが保有する健康・医療・介護データを有機的に連結し、柔軟性があり、機能する情報システムを整備する必要がある。こうしたことにより、個々人に最適な健康管理・診療・ケアも実現可能となる」としています。

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-jyouhouseisaku_408412.html

統計機能

さて、病院内に眠っているデータについて目を向けましょう。古くから電子カルテ導入の一つの意義に、統計データの活用がありました。電子カルテ及びレセプトコンピュータ(レセコン)には、そもそも統計機能があります。これらの機能を活用することで、経営分析に必要な統計情報を作成することは可能です。ただし、これらの機能はたいてい、導き出したい情報を取り出すための条件を入力して、検索・ソートして、CSVに吐き出してから、エクセルなど統計ソフトで計算、再形成を行う必要があり、作業に手間がかかります。多くの病院の経営企画室が、この作業に四苦八苦しています。

そこで、そのような手間な作業を減らすことを目的に、電子カルテを導入する際にあらかじめ要求仕様書(RFP)の中で「統計データを自動的に作成できるもの」という内容が盛り込まれることが多くなりました。この場合、どのようなデータを作成するかのアウトプットイメージを事前に提示することで、ベンダーはどのようなものを用意するかが分かるようになります。電子カルテ導入時には、現在作成している統計資料を提示し、要件を決めるミーティングなどで意図をしっかり伝えると良いでしょう。

RPAの活用

現在、様々な分野でRPAの活用が始まっています。RPAとは、Robotic Process Automationの略で、バックオフィス業務をロボットに覚え込ませ、自動的に再現する仕組みです。銀行などで先行して導入が始まっており、大きな効果が出てきています。この仕組みを利用すれば、電子カルテとRPAソフトが同居することで、人間が行った手順をロボットが覚え、それを次回から自動的に実行することができるようになるので、統計データを作る手間を大幅に削減することが可能になるのです。

経営分析ツール

一方、最近では、病院側のニーズを受けて、電子カルテに外付けする「経営分析ツール」の開発も進んでいます。たとえば、患者の来院数、1日単価、病床稼働率、手術稼働率、医療機器の稼働率、紹介・逆紹介率など、経営上の必要なKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)をあらかじめ設定し、電子カルテやレセコン、財務データを組み合わせて導き出す仕組みです。これらを蓄積させることで、前年比と比較するなど「経年比較」が可能になり、たとえば2年に1回ある診療報酬改定の影響なども把握しやすくなることでしょう。

また、このツールが病院に多く導入されていくと、そのデータベースを活用して他の病院とベンチマークができるようになります。それらのサービスを提供しているものも出てきています。この仕組みを利用することで、同じくらいの規模で同じような機能の病院と比較することが可能となり、自らの病院の課題が明確になり、経営改善につながっていくと期待されています。

 これら「経営分析ツール」の開発が進んだ背景には、DPCやデータ提出加算など、政府が各病院に診療データの提出を促したことが大きく影響しています。政府は将来的には病院全体にデータ提出を義務付けることを考えているため、改定ごとに提出する病棟の範囲が広がっています。