「なぜ、いま電子カルテなのか」

電子カルテネットワークイメージ
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2019.5.21

豆知識

医次元編集部

医次元編集部

はじめに

電子カルテが誕生してから約20年が経ちました。電子カルテ普及状況も先行していた大規模病院では8割を超え、中小規模の病院においても、いよいよ普及本番を迎えようとしています。2019年時点で、電子カルテはどの病院でも検討がはじまっており、電子カルテというシステムが一般的になったと言っても過言ではないでしょう。

電子カルテの普及が始まった背景には、2025年を目途に急ピッチで進められている地域包括ケアシステムの整備が大きな影響があると思われます。地域包括ケアとは、病院間をデジタルな情報網でつなぐことで、大きな病院のごとく、スムーズに連携することを目指しています。つまり、この流れに乗らなければ、いずれ患者がいなくなるということを意味しています。この地域の情報網である地域連携ネットワークに参加するためには、院内のデジタル化を進める必要があるために、中小規模の病院でも電子カルテの導入を検討するようになっているのです。


出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/)

電子カルテの導入効果とは何か?

電子カルテは、狭義に言えば従来の紙カルテをデジタル化するシステムです。電子カルテによってデジタル化された情報は、看護、リハビリ、放射線、検査、栄養、医事などの各部門に情報共有されていきます。そのため、最近では電子カルテ導入とは、部門システムも含める流れとなっています。

つまり、電子カルテは、院内情報をアナログからデジタルへの変化させること、そのデジタル化によって可能になったデジタルでの情報共有により、院内ならびに院外のコミュニケーションをスムーズに行い、IT化の得意な「時間、場所、距離」を限りなくゼロにしようとする試みだと言えるでしょう。そう考えると、電子カルテ導入の効果とは、院内・院外の情報共有が進み、病院の様々な業務が効率化されることにあると考えます。

電子カルテ導入の難しさ

しかしながら、この効果はスムーズに進んで始めて得られるもので、導入プロセスが誤っていると、「なぜこんなものを入れたのか」「返って大変になった」と、悲観的な声が多く聞かれるようになります。そこには、システムを使うヒトのスキルと、システムに合わせた業務フローの設計、部門システムの連携などがうまく噛み合って初めて、スムーズに進むのです。この全体設計が病院ごとの状況に合わせてフルカスタマイズで行われてきたことが難しさや高い導入コストを生み出していたのだと感じます。

フルカスタマイズからマスカスタマイゼーションに

現在、電子カルテの導入が進み、システムベンダーが多くの経験を積むことで、システムの標準化が進みました。これまでのようなシステムを現場でカスタマイズ(古カスタマイゼーション)する開発方法から、パッケージ(マスプロダクション)をベースに、オプションを組み合わせる、マスカスタマイゼーションという開発方法に変わって行っています。その結果、規模の経済※1と範囲の経済※2の恩恵により、導入コストの低下と導入期間の短縮がもたらされています。

システムが成熟してきた今こそ、電子カルテの導入がしやすい時期に入ったと言えるのではないでしょうか。

※1 規模の経済…規模が拡大することで効率化が行われ、コストが低減すること。スケールメリットともいう。

※2 範囲の経済…個別に開発された技術をパーツ化し、複数の開発で共有することで、生産性が向上すること。

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