2019.5.24
「電子カルテは導入から運用の時代に」

はじめに
電子カルテがあまり普及が進んでいない黎明期には、「診療現場で本当に使えるのか」と考える半信半疑のドクターも多くいました。そのため、電子カルテの選定ポイントとしては、まずは「機能」や「操作性」が多く挙げられていました。しかし、普及期を迎えた2019年現在は各社の機能の差が著しく縮まり、ドクターが要求するレベルに近づいています。
最近では「各社の電子カルテの画面が似てきた」という声をよく聞きます。メーカー同士が互いに良い製品を作ろうと切磋琢磨していくうちに、全体的にインタフェースが類似する傾向にあるようです。電子カルテの操作性や機能にそれほど差がなくなりインタフェースも標準化されることで、「誰もが電子カルテを使える時代が近づく」ことになり、ユーザーにとっては良いことだといえます。
「普及期」はサポート・実績を重視
インタフェースの差が減少する普及期に入ると、選定ポイントとして「サポート」や「実績」「コスト」を重視する傾向があります。ここでいうサポートとは導入サポートを指しており、運用とも言いかえることができます。保守やメンテナンスのことではありません。また、このサポートは実績と密接な関係にあり、さまざまな対応を経験することで実績が増えれば、その分サポートの質が良くなる傾向にあります。
また、「コスト」についても、「規模の経済」や「範囲の経済」が働くことにより、提言していきます。個別のカスタマイズをあまり行わずに、パッケージのままにオプションを加える程度に抑えることでリーズナブルな導入が可能になるのです。
クラウドタイプの電子カルテの出現
2010年の医療分野でのクラウドコンピューティング(以下、クラウド)が解禁されたました。クラウドという新しい仕組みにより、電子カルテ業界は大きな変化を迎えています。電子カルテがある特定な層が購入する高価なシステムから、誰でも手の届くような一般的なシステムへと変化していっているのです。
2019年現在、電子カルテをはじめ様々なシステムのクラウド化が進んでいます。病院向け電子カルテにおいても、クラウドタイプのものが出てきており、現在は電子カルテを選ぶときの選択肢の1つとなっています。

クラウドとオンプレミスの違い
クラウドとオンプレミス(院内サーバ型)の大きな違いは、サーバを院内に置くか、企業に預けるかという問題です。クラウドは、電子カルテという基幹システムの保守管理を医療機関側から企業側に移すことで効率化が図れるとされています。システムの更新・サポート面において、企業は自社内に置かれたサーバをメンテナンスすることですみ、医療機関それぞれで管理するよりはるかに効率的で安価ですむと考えられています。
医療機関ごとのカスタマイズ
また、クラウドとオンプレミスの違いは、サーバの管理場所だけの問題ではありません。ソフト面にも大きな違いがあります。クラウドは不特定多数の医療機関で共同使用することを想定しているのに対して、オンプレミスは特定の医療機関に合わせて開発できるようになっています。その結果、医療機関の運用に合わせたカスタマイズという面では、大きな違いがあるのです。つまり、「システムを運用に合わせるのか」「運用をシステムに合わせるのか」これを検討することが、いまのところカスタマイズの面で重要なポイントになると言えるでしょう。
導入から運用の時代に
現在の電子カルテは、導入自体が目的であった時代から、より運用を意識した時代に変わろうとしています。つまり、電子カルテを導入して何を実現したいか(どんな効果を得たいか)を考える時代になったっといえるでしょう。
電子カルテの導入には、運用フローの作成(紙カルテの運用を踏まえた新たな運用フロー)や各種マスターの整備、操作研修などを含めて、ベンダーの担当者が電子カルテシステムの構築をサポートします。この部分は、メーカー担当者の提案力の差とも言えますから、電子カルテの選定ポイントとして「提案力」が重要になってきています。現場のワークフローを理解し、それに合致した運用ができる電子カルテを構築できれば、その後の円滑な運用につながります。