2019.7.1
電子カルテと医事会計システム

はじめに
電子カルテと医事会計システム(レセプトコンピュータ)は、ほとんどの医療機関で最初につなげるシステムです。医事会計システムの歴史は古く1970年代にさかのぼります。医療において最も早くシステム化されたものです。その後、1980年代にオーダーエントリーシステム、1990年代に電子カルテが誕生しました。2000年代に入り、レセプトの電子請求が義務化されたことを受けて、一気に普及が進みました。2019年現在では医事会計システムは病院ではほぼ普及が完了しています。
電子カルテと医事会計システムの関係は、医療現場で行われた診療内容を電子カルテに入力し、医師がオーダーした内容をそれぞれの部門が実施し、実施した結果をもって、医事会計システムがコストに変換し、レセプト(診療報酬明細書)を作り、請求を行うという流れとなります。つまり、電子カルテと医事会計システムの関係は「診療行為を正しくお金に変える仕組み」と考えると分かりやすいでしょう。
電子カルテと医事会計システムの連携
電子カルテと医事会計システムを連携する場合は、電子カルテと医事会計システムを同一メーカーにするか、別々のメーカーにするかという問題があります。既存の仕組みや運用を大きく変えたくない場合は、いまある医事会計システムに電子カルテを連携させることになります。電子カルテと医事会計システムは連携の実績が多いシステム同士ですので、過去に実績がありさえすれば、問題なく連携できると考えてよいでしょう。また、コスト面で既存の医事会計システムにつないだ場合と、新たに電子カルテと医事会計システムを導入した場合とどちらの方が割安かも確認してください。
レセプトチェックの仕組み
医事会計システムは、レセプトコンピュータと呼ばれるように、本来レセプトを作成することを主眼に置いたシステムです。そのため、レセプト請求のしやすさとともに、レセプトチェックについても検討が必要です。
レセプトチェックは自前で持っているメーカーと、専門メーカー(AIS【マイティチェッカー】、日立【べてらん君】、NTTデータ【レセプト博士】など)の仕組みを組み込む場合があります。
また、最近ではチェックを行うタイミングも重要になってきています。従来は、レセプト請求前に、レセプト電算ファイルの形式にしてから、レセプトチェックソフトを使って点検をし、点検結果に基づき修正してから請求するという仕組みでしたが、最近ではオーダーチェックと言われる、電子カルテで処方等をオーダーした時点で、適応病名や禁忌病名、薬の相互作用などをチェックできる仕組みも出てきています。さらに、点検内容も様々ですから、どこまでチェックをかかるようにするかをしっかり決めておくことが重要です。
経営データの作成
医事会計システムのデータは、いわば医療機関の売上データですから、このデータを利用して経営管理を行っています。また、電子カルテやそれ以外の内容も含めて経営管理データを作成することもあるでしょう。現在、病院内で作成している経営帳票をベンダーに提示し、どのようなデータを作成・管理したいかを打ち合わせる必要があります。
今後はRPA(Robotic Process Automation)などの技術を利用して、自動的に経営管理データを作成する時代となることが予想されます。ちなみにRPAとは、「これまで人間が行ってきた事務作業の一部を、ロボットを使って自動化する取り組み」です。
人間が電子カルテやレセコンから経営管理データを作成する場合の一般的な流れは、電子カルテ等からCSVでデータを抽出し、これをエクセルなど表計算ソフトで加工し、グラフなどで表示させるという作業です。この業務もRPAを使うことで、毎日自動的に欲しいデータのグラフが定型のフォーマットで作成することが可能になります。現在、電子カルテを導入するための要求仕様書(RFP)を作る際に、「自動的に統計データが算出できること」という項目が盛り込まれるようになりました。
自動精算機との連携
医療の世界に自動化の波が確実に訪れています。その典型例が、医事会計システムとつないで、自動的に精算業務を行う「自動精算機」です。従来は、電子カルテに入力された情報をレセコンが診療報酬点数に置き換え、患者の自己負担額を計算していました。その後、ほとんどの医療機関では、その金額を見ながらレジスターに入力し、精算業務を行っていました。医事会計システムに連動した自動精算機を導入することで、これらの業務が自動化され、患者自らが診察券を入れるだけて、本日の負担額が表示され、お釣りも自動で出て来るようになります。入力間違いや釣銭の渡し間違いはなくなるのです。自動精算機の価格がリーズナブルになったことを受けて、大規模病院から中小規模の病院まで導入が進んでいます。