2019.11.18
電子カルテセッティングの極意

はじめに
最近では、電子カルテは、レセプトコンピュータ(以下、レセコン)と対で議論されることが多くなりました。医療ICTの歴史的流れを考えると、1970年代にレセコンが誕生し、1980年代にオーダリングが誕生、そして2000年代に電子カルテが誕生、という順番で発展してきた経緯があります。そのため、これらのシステムを段階的に導入する手法がとられてきたのはやむを得ない流れでした。
しかしながら、現在は電子カルテの普及が進み、病院のシステム化に必要なシステムがほぼ出そろった状況では、電子カルテという概念にオーダリング、レセコンが含まれようとしているのです。
電子カルテは「診療行為を診療報酬点数に変換する」ツール
そもそも電子カルテは「何のために導入する」のでしょうか。カルテは病院全体に指示を出すための「発生源」という位置づけです。人間に例えるならば、全身に血液を送る心臓のような役割です。つまり、病院の心臓である電子カルテが、病院の血液である情報を各部門に隅々まで送り出すのです。そして各部門の実施結果の情報がレセコンに流れ込むことで、診療報酬点数というお金に変換することになります。カルテを電子化する真の意味は、診療行為を診療報酬点数に効率よく変換することと言ってよいのではないのではないしょうか。したがって、電子カルテはその効率化を促進するためのツールと考えるべきなのです。
月1回のレセプト点検はマイナスの点検
多くの病院で月1回レセプト点検を行っています。病名と薬の突合や、検査の縦覧点検など、診療報酬点数表を見ながら、毎月医事課が確認を行っています。最近では、レセプトチェックソフトが普及してきており、チェック後にエラーとなったカルテだけを再度チェックするという流れが出て、大分点検業務は楽になったのではないでしょうか。いずれにしてもレセプトチェックは、患者の会計終了後に行われるものですから、間違いを発見しても、点数を減らすことしかできず、返戻・査定とならないようにマイナスの点検とならざるを得ません。会計前に間違い(取り漏れ)に気づかなければ、プラスの点検とはならないのです。
最近では、医事に詳しいスタッフを、医師の隣にクラークとして配置し、即点検を行う体制を取っているところもあります。「正しいカルテが正しいレセプトを作る」という基本を忠実に守った体制作りです。
レセプトを意識した電子カルテのセッティング
また、レセプト(診療報酬明細書)を意識してカルテを記録するという俯瞰逆算の考え方でカルテを作成してはどうでしょうか。診療報酬点数は算定のために、様々なルールが存在します。例えば、「特定疾患療養管理料」という点数を考えてみましょう。
以下は診療報酬点数表から分かりやすく加工したものです。
◎特定疾患療養管理料
1 診療所の場合 225点
2 許可病床数が100床未満の病院の場合 147点
3 許可病床数が100床以上200床未満の病院の場合 87点
①厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者に対して、治療計画に基づき療養上必要な管理を行った場合に、月2回に限り算定する。
②初診料を算定する初診の日に行った管理又は当該初診の日から1月以内に行った管理の費用は、初診料に含まれるものとする。
③入院中の患者に対して行った管理又は退院した患者に対して退院の日から起算して1月以内に行った管理の費用は、入院基本料に含まれるものとする。
④在宅療養指導管理料の各区分に掲げる指導管理料又は皮膚科特定疾患指導管理料を算定すべき指導管理を受けている患者に対して行った管理の費用は、各区分に掲げるそれぞれの指導管理料に含まれるものとする。
<ポイント>
・生活習慣病等を主病とする患者について、プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理を行うことを評価したもの。
・患者に対して、治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の管理を行った場合に、月2回に限り算定する。
・管理内容の要点を診療録に記載する。
このように診療報酬点数表では、算定に当たって「服薬、運動、栄養等の療養上の管理」を行った場合に月二回算定できるとされています。また、併せて「管理の要点」を診療録に記録することを求めています。
このことから同点数を算定する場合、点数とカルテの記載をセット化する必要があるのです。医学管理料の多くは、カルテに計画や管理、指導の要点の記録を求めていることが多く、これらをセット化しておくことは、算定上重要になります。
このように、電子カルテ時代は、監査や個別指導の際に、カルテとレセプトの突合が容易にできることから、常に左側(経過欄)と右側(オーダー欄)を合わせられるような工夫が必要になるのです。